持ち家なら、年を重ねても安心なのか|AIと公共データの実験室 #16
「持ち家があれば、老後は安心」
私たちの世代には、そんな感覚がどこかにある。
家賃を払い続けなくてよい。住み慣れた場所で暮らせる。それは確かに大きな安心だ。
でも、一戸建てには修繕や庭の管理がある。階段や段差も、元気なときと同じようには使えなくなるかもしれない。
高齢化率と住宅形態を重ねると、何が見えるのだろう。
高齢化率と持ち家率には関係があったのか
埼玉県の53市町では、かなりはっきりした傾向が見えた。
高齢化率と持ち家率の相関は 0.819。一戸建て率とは 0.816 だった。
一方、共同住宅率との相関は -0.804。高齢化率の低い地域ほど、マンションやアパートなどの共同住宅が多い傾向だった。
ただし、「持ち家だから高齢化した」という意味ではない。
住宅地が開発された時期、入居した世代、若い世代の転入、駅への近さなどが、両方の数字に表れている可能性がある。
どの市町で持ち家率が高かったのか
持ち家率が高かったのは、吉見町92.9%、松伏町88.0%、川島町85.4%、小川町84.9%だった。
低かったのは、和光市44.0%、戸田市44.9%、蕨市48.9%、朝霞市53.7%だった。
共同住宅率は、和光市76.5%、戸田市75.1%、蕨市67.5%と高かった。
東京へ通いやすい地域には、若い世代や単身世帯が住みやすい賃貸住宅も多い。その地域の成り立ちが、数字に出ているように見える。
これは仮説であり、転入者の年齢や住宅の建築時期を重ねて確かめる必要がある。
持ち家と共同住宅は、ほぼ反対に並んだ
持ち家率と共同住宅率の相関は -0.939。かなり強い逆方向の関係だった。
けれど、ここで「持ち家と賃貸のどちらがよいか」を決めたいわけではない。
持ち家には、住み慣れた安心がある。その一方で、屋根や外壁の修繕、庭の手入れ、固定資産税が残る。
共同住宅には、ワンフロアで暮らしやすい物件もある。その一方で、家賃、エレベーター、管理規約などを確認する必要がある。
大事なのは所有の形より、暮らしとの相性だと思う。
自分や親の家なら、何を確認するか
家の中を一度、10年後の自分のつもりで歩いてみたい。
- 玄関、浴室、廊下に大きな段差はないか
- 寝室からトイレまで安全に移動できるか
- 二階を使わなくても生活できるか
- 修繕費や家賃を払い続けられるか
- 車を使わずに店や病院へ行けるか
- 一人になっても管理できる広さか
自治体の持ち家率は、こうした家の中までは教えてくれない。
だからこそ、統計を見た後に自分の家へ戻って考える意味がある。
今回、データを掛け合わせて見えたこと
高齢化率の高い地域では、持ち家と一戸建てが多い傾向だった。
しかし、持ち家があることと、その家で安心して暮らし続けられることは同じではない。
今回のメッセージを一言でいえば、こうなる。
家を持っているかより、その家で暮らしを続けられるかを見る。
住宅形態の数字は、家の中と、その先にある移動まで考える入口だった。
今回の要点
- 高齢化率と持ち家率の相関は0.819
- 高齢化率と一戸建て率の相関は0.816
- 高齢化率と共同住宅率の相関は-0.804
- 住宅形態が高齢化の原因とは言えない
- 段差、修繕費、家賃、移動まで見ないと暮らしやすさは分からない
よくある疑問
相関0.819なら、持ち家が高齢化の原因ですか
違う。二つの数字が同じ方向へ動く傾向は強いが、原因を示してはいない。住宅開発の時期や人口移動など、別の条件が関係している可能性がある。
持ち家なら老後の住居費は安心ですか
家賃はない場合が多いが、修繕費、固定資産税、保険、庭の管理などは残る。住宅ローンが続く場合もある。
共同住宅のほうが高齢者に向いていますか
一概には言えない。段差が少なくても、エレベーターがなかったり、家賃負担が大きかったりする場合がある。
なぜ53市町だけですか
2023年住宅・土地統計調査の市町別公表値がある自治体を使ったため。県内63市町村すべてを含む比較ではない。
次に何を調べますか
築年数、段差や手すり、住宅費、駅・店・病院までの距離を重ねたい。
出典
※相関関係は因果関係を示さない。住宅・土地統計調査は標本調査であり、市町別の数値は推計値を含む。
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