人が多く住む地域ほど、高齢化は進みにくいのか|AIと公共データの実験室 #15

「年をとっても、今の場所で暮らし続けたい」

そう考えたとき、近くに何人住んでいるかを気にする人は少ないかもしれない。

けれど、人がまばらな地域では、店や病院、バスなどのサービスを維持するのが難しくなることがある。高齢化率と人口密度を重ねたら、その違いは見えるのだろうか。

埼玉県63市町村のデータで確かめた。

まず「人口密度」とは

人口密度は、1平方キロメートル当たりに何人住んでいるかを示す数字だ。

人口密度 = 自治体の人口 ÷ 自治体の面積

同じ10万人の自治体でも、面積が小さければ人口密度は高く、広ければ低くなる。

今回は2020年の国勢調査人口と市町村面積を使った。

人口密度が低いほど、高齢化率は高い傾向だった

高齢化率と人口密度の相関は -0.713。人口密度の大きな差をならして比べるため対数化すると、相関は -0.805 だった。

埼玉県内では、人口密度が低い自治体ほど高齢化率が高い傾向が比較的はっきり見えた。

ただし、これは「人が少ないから高齢化した」という意味ではない。

若い世代の転入、住宅開発、働く場所、地形、東京への通勤のしやすさなど、いくつもの要因が重なっているはずだ。

数字にすると、これだけ差がある

人口密度が最も高かった蕨市は、1平方キロメートル当たり約14,553人。川口市は約9,595人だった。

一方、小鹿野町は約64人、東秩父村は約73人だった。

同じ埼玉県でも、暮らしを支える条件は大きく違う。

ここで注意したいのは、市町村の面積には山林なども含まれることだ。家が集まる場所だけを見れば、実際にはもっと密集している場合がある。

人口密度の低さだけで「暮らしにくい」と決めてはいけない。

人口密度を交通と重ねると何が見えたか

対数化した人口密度と公共交通人口カバー率の相関は 0.722。人口密度が高い地域ほど、公共交通でカバーされる人の割合が高い傾向だった。

人口1,000人当たりの乗用車・軽自動車保有台数との相関は -0.933。人口密度が低い地域ほど、自動車保有が多い傾向はさらに明瞭だった。

これは、以前の「高齢化率と公共交通」の分析ともつながる。

高齢者も車を運転する。車があるうちは不便を感じなくても、運転をやめた後に、買い物や通院の距離が急に重くなるかもしれない。

自分や親の暮らしに置き換えると

確認したいのは、自治体全体の人口密度だけではない。

  • スーパーや病院まで、車なしで行けるか
  • バスは通っているだけでなく、使いたい時間に走っているか
  • タクシー、送迎、移動販売など別の手段があるか
  • 家族や近所に頼れなくても生活を続けられるか
  • 5年後、10年後も今のサービスが残りそうか

「人が何人いるか」より、「必要な場所までどう移動できるか」のほうが、毎日の生活には大切だ。

今回、データを掛け合わせて見えたこと

人口密度が低い地域ほど高齢化率が高く、自動車への依存も強い傾向だった。

しかし、人口密度が低いこと自体が問題なのではない。

今回のメッセージを一言でいえば、こうなる。

人の少なさより、暮らしに必要な場所がどれだけ離れているかを見る。

人口密度は答えではなく、移動、買い物、医療をもう一段深く調べる入口だった。

今回の要点

  • 高齢化率と人口密度の相関は-0.713
  • 対数化した人口密度との相関は-0.805
  • 人口密度が高い地域ほど公共交通カバー率が高い傾向
  • 人口密度が低い地域ほど自動車保有が多い傾向
  • 市町村面積には山林も含まれるため、数字だけで暮らしやすさは判断できない

よくある疑問

相関-0.805なら、人口密度が高齢化を防ぐのですか

そうとは言えない。二つの数字が逆方向に動く傾向は強いが、原因を示すものではない。若い世代の転入や住宅開発など、別の要因が関係している可能性がある。

人口密度が低い自治体は暮らしにくいですか

一概には言えない。中心部に生活機能が集まっていたり、車や送迎サービスが使えたりすれば暮らしやすい場合もある。

次に何を調べますか

山林などを除いた可住地人口密度や500m人口メッシュを使い、住居から店、病院、駅、バス停までの距離を確かめたい。


出典

  • [総務省統計局「令和2年国勢調査」](https://www.stat.go.jp/data/kokusei/2020/kekka.html)
  • [国土交通省「国土数値情報 行政区域データ」](https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-N03-v3_1.html)

※相関関係は因果関係を示さない。人口密度は市町村全域の面積で計算しており、実際の居住地の密集度とは異なる場合がある。

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