AIと公共データの実験室 #06|地価は「高い・安い」だけでは見えない

自分の住んでいる地域の地価を、気にしたことはありますか。

家を売る予定がなければ、関係ないと思うかもしれません。

でも地価には、その地域に「住みたい」「通いたい」と思う人の動きが、少しずつ映ります。

今回は、埼玉県63市町村の高齢化率と住宅地の平均価格を重ねました。

結論から言うと、高齢化率が高い地域ほど、住宅地の平均価格が低い傾向が見えました。

ただし、「高齢化したから地価が下がった」とは言えません。

むしろデータが見せてくれたのは、地価が年齢そのものよりも、東京への近さ、鉄道、人口の流入など、その土地がどこへつながっているかを強く映しているのではないか、ということでした。

今回見た「地価」は何の数字?

地価には、公示地価、都道府県地価調査、実際の取引価格などがあります。

今回は、埼玉県が2025年7月1日時点で調べた「地価調査」のうち、住宅地を使いました。県内すべての63市町村を同じ形で比べられるからです。

使ったのは、市町村ごとの住宅地の平均価格と、前年からの平均変動率です。

ここで注意が必要です。

この平均価格は、県が選んだ基準地点の平均です。自治体内の土地を全部調べた数字でも、あなたの家の査定額でもありません。

同じ市内でも、駅前と郊外では価格が違います。今回は地域の大きな傾向を見るための数字です。

高齢化率と地価を重ねた結果

2020年の高齢化率と、2025年の住宅地平均価格の相関係数は「-0.772」でした。

相関係数は、二つの数字が一緒に動く傾向を見る目安です。マイナス1に近いほど、一方が高いともう一方が低くなる傾向が強くなります。

今回の埼玉県63市町村では、高齢化率が高い地域ほど、住宅地の平均価格が低い傾向がかなりはっきり出ました。

住宅地平均価格が高かったのは、戸田市31万5,800円、蕨市30万4,000円、和光市26万1,800円、川口市26万800円、朝霞市25万5,300円でした。いずれも1平方メートル当たりの金額です。

県南で、東京へのアクセスがよい地域が上位に並びます。

一方、高齢化率が46.55%の東秩父村は8,200円、38.87%の小鹿野町は1万3,600円、38.89%の小川町は2万6,200円でした。

数字だけを見ると、「高齢化率が地価を決めている」と言いたくなります。

でも、そこは立ち止まる必要があります。

高齢化が地価を下げた、とは言えない

高齢化率は、その地域に高齢者が何人いるかだけで決まりません。

若い人や子育て世帯が入ってくれば、高齢者の人数が変わらなくても高齢化率は下がります。

そして若い世帯が流入する地域は、駅に近い、東京へ通いやすい、住宅供給がある、といった条件を持っていることが多いと考えられます。

つまり、交通の便利さや人口流入が、地価を支える一方で高齢化率を低く見せている可能性があります。

これは今回のデータから確定した事実ではなく、次に確かめたい仮説です。

実際、2000年から2020年の人口増減率と住宅地平均価格には、プラスの相関がありました。人口が増えた地域ほど、価格も高い傾向です。

「高齢化」と「地価」の二つだけを見ていたつもりが、その間に「人が移り住む力」が見えてきました。

予想から少し外れた三芳町

高齢化率が30%以上の自治体の中で、三芳町は目を引きました。

高齢化率は30.00%。住宅地平均価格は16万6,300円で、前年から3.5%上がっています。2000年から2020年の人口も7.5%増えていました。

高齢化率が30%に達していても、人口の動きや立地条件が違えば、地価の動きも変わるようです。

ここでも、高齢化率だけで地域の将来を決めつけられないことが分かります。

地価が高い地域は、暮らしやすいのか?

地価が高い地域には、交通や買い物の便利さ、仕事へのアクセスなどが価格に反映されている可能性があります。

しかし、地価が高いことが、そのまま誰にとっても暮らしやすいことを意味するわけではありません。

家を買う人には負担が大きくなります。固定資産税や相続を心配する人もいます。静かな環境や広い土地を求める人には、価格の低い地域が合うこともあります。

反対に地価が低い地域も、「価値がない地域」ではありません。

自然、地域とのつながり、住居費の低さなど、地価に表れにくい価値があります。

地価は地域の点数ではなく、土地の需要を映す一つの温度計として見るのがよさそうです。

自分の家に置き換えると?

私たちが本当に知りたいのは、市町村の順位だけではありません。

いま住んでいる家を、この先も使い続けられるか。

子どもに引き継ぐのか。売るのか。住み替えるのか。

そのとき大切なのは、市町村の平均地価だけでなく、最寄り駅までの距離、病院や店への行きやすさ、災害リスク、家の状態です。

前回の空き家分析ともつながります。家に価格が付くことと、次に使う人が見つかることは無関係ではありません。

元気なうちに、自宅の近くの公的な地価地点を一度見ておく。それだけでも、家族で将来を話す材料になります。

今回分かったこと

  • 高齢化率が高い市町村ほど、住宅地平均価格が低い傾向があった
  • 人口が増えた市町村ほど、住宅地平均価格と直近の上昇率が高い傾向もあった
  • 県南の東京へつながりやすい自治体が、地価上位に多く並んだ
  • 高齢化率だけでは地価を説明できず、人口流入や交通などを一緒に見る必要がある

この分析だけでは分からないこと

  • 駅までの距離が価格にどの程度影響したか
  • 実際に売買された土地の価格
  • 同じ市町村内の地域差
  • 用途地域、災害リスク、学校や医療への近さの影響
  • 高齢化と地価のどちらが先に動いたのか

高齢化率は2020年、地価は2025年で年次が一致しません。また、相関関係は因果関係を示しません。

今回の数字は、自治体を採点するためのものではありません。

読んだあとにできる小さな一歩

国土交通省の「不動産情報ライブラリ」などで、自宅の近くの地価公示・地価調査地点を一つ探してみてください。

そして家族と、三つだけ話してみるのはどうでしょう。

  1. この家に、あと何年くらい住みたいか
  2. 車を運転しなくなっても生活できるか
  3. 将来、この家を誰が使う可能性があるか

地価を知ることは、家の値段を知るだけではありません。

これからの暮らし方を考える入口にもなります。

3行まとめ

  • 埼玉県では、高齢化率が高い地域ほど住宅地平均価格が低い傾向が見えた
  • ただし背景には、人口流入、東京への近さ、交通アクセスなどが重なっている可能性がある
  • 地価は地域の点数ではなく、自分や家族のこれからを考える材料の一つ

よくある質問

地価が下がると、地域の価値も下がるのですか?

同じではありません。地価は土地の需要を表す指標の一つです。自然環境、地域のつながり、住居費の低さなど、価格だけでは測れない価値があります。

高齢化すると、必ず地価は下がりますか?

必ずではありません。今回も三芳町のような例がありました。交通、人口流入、住宅需要など別の条件を確認する必要があります。

この平均価格で自宅の値段が分かりますか?

分かりません。基準地点の平均であり、個別の土地は駅距離、道路、形状、用途地域などで価格が変わります。

主な出典

※相関関係は因果関係を示しません。個別自治体の優劣を評価する目的ではありません。

公共データを使った地域分析のご相談

株式会社Willow38へのお問い合わせはこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA